1.自然保育および一般的な幼児教育・保育の現状と保育者養成の課題

※大会プログラム・抄録集に記載している内容から、こちらに変更しています。

企画担当者・モデレーター・話題提供者  田中 住幸(札幌大谷大学短期大学部)
話題提供者  陳 倩倩(はやきた子ども園)  中本 貴規(飯田短期大学)
       酒井 俊郎(中部大学)
指定討論者  能條 歩(北海道教育大学岩見沢校)

演者の話題を元にして、活発な議論が展開できれば幸いです。日本ユニセフ協会「日本型子どもにやさしいまちモデル検証作業」実践自治体である北海道安平町の「はやきた子ども園」を事例にして、ESD(Education for Sustainable Development)・環境教育の観点から、自然保育実践と課題について紹介する。幼児期からのESDの取り組みは、小学校以降と比較して低調だが、全国各地の自然保育の広がりは、推進のきっかとして期待できる。具体的なESDの事例を紹介し、幼児期の自然保育の可能性について検討する。保育者養成大学での教育・研究、幼稚園園長としての経験、現在も「保育内容・健康」を講義している立場から、特に浜松市の幼児教育の話題を紹介する。

2.メタ分析をやってみた!〜その実際とポイント〜

企画・話題提供  向後 佑香(筑波技術大学)  張本 文昭(沖縄県立芸術大学)

メタ分析は、過去に実施された複数の研究データを統計的に統合し、包括的な分析を行う手法です。研究手法としての位置づけは系統的レビューにおける統計的な解析部分に相当します。メタ分析では複数の結果をまとめることによってサンプル数の少なさや研究間の結果の不一致(例えば、有意またはn.s.といった違い)を解消することが可能です。またメタ分析を行う過程では、必然的に多くの論文に目を通すので、野外教育ではどのような研究が実施されているのか、その全体像や概要を実感として確認することができます。比較的、海外では野外教育に関するメタ分析は多く実施されていますが、国内では3編が確認できるに過ぎません。今回の自主企画シンポジウムでは、メタ分析に関する概略を確認しつつ、直近の『野外教育研究』に掲載された総説論文に沿いながらメタ分析の手順について解説します。

3.我が国の自然体験活動におけるデジタル技術活用の現状

企画者    甲斐 知彦(関西学院大学)
企画協力者  青木 康太朗(國學院大學) 竹内 靖子(桃山学院大学)
       西垣 幸造(公益財団法人日本アウトワード・バウンド協会・関西学院大学)
登壇者    下仲 健太 氏(前文部科学省、現国立淡路青少年交流の家)
       野口 利恵 氏(株式会社浜銀総合研究所)
       遠山 昻 氏(国立阿蘇青少年交流の家)

2022年度に文部科学省からの委託調査として、浜銀総合研究所主導のもと、「自然体験活動におけるデジタル技術の活用に関する調査研究」が全国規模で実施されました。本自主企画シンポジウムは、その調査研究に実施者、調査研究員、事例紹介者として参画したメンバーで企画しました。当日は、実施主体の立場から下仲健太氏(現国立淡路青少年交流の家)、調査を主導され、多くの団体のヒヤリングを実施された野口利恵氏(株式会社浜銀総合研究所)、大変興味深い事例をご紹介いただいた遠山昻氏(国立阿蘇青少年交流の家)にご登壇いただき、我が国における自然体験活動へのデジタル技術の活用状況を学会大会にご参加の皆さんと共有させていただきたいと思っております。

4.次世代の野外教育について考える:デジタル技術・AI・WEB3は野外教育とどう交わるか

司会者・話題提供者  及川 未希生(盛岡大学短期大学部)
話題提供者  庄子 佳吾(桜の聖母短期大学)

急速なデジタル技術の進展が様々な分野に波及する中、野外教育とデジタル技術との融和についても他分野同様に次世代に向けた研究が進展していく必要がある。本シンポジウムでは、次世代の野外教育がデジタル技術・AI・WEB3とどのように関わり合い、交わっていくことができるのかについて可能性を探る。
具体的には、ゲーム型授業応答システム「Kahoot!」の実践事例、リアルタイム性と情報拡散性に優れたSNSである「Twitter」の機能を活用した野外活動での事例を取り上げ、学習効果や情報伝達の効率性等について野外教育との援用の可能性をテーマに議論する。
さらに、ブロックチェーン技術を利用した次世代型健康ヘルスケアアプリの実態を紹介し、WEB3社会における野外教育とデジタル技術の交錯点について、参加者と意見交換を行いながら新たな知見を共有し、次世代の野外教育の可能性を引き出すことを目指す。

5.日本の野外教育は世界のどこに立っているのか?

ファシリテーター  岡村 泰斗(株式会社backcountry classroom)

1992年に発表された冒険プログラムの成長曲線によれば、15カ国が、誕生期、成長期、ピーク期、衰退期、消滅期に分類されており、アジアの国としてはシンガポール、台湾、インド、中国が誕生期に分類され、日本は記載されていない(Simon, 1992)。25年たった2017年のデータでは、シンガポール、インドネシアが成長期に入り、台湾、インド、中国も誕生期の後期にシフトしているものの、再び日本が記載されることはなかった。この成長曲線の根拠は、筆者であるSimon Priestが作成した、国の冒険プログラムの成長を測る10の観点と4水準の基準に基づき、各国の視察及び情報収集により、グレーディングしたものである。つまり、日本の野外教育の情報が海外に発信されていないが故の結果である。では、日本の野外教育は今世界のどこに位置しているか?このワークショップでは、彼が開発したルーブリックをもとに、参加者と共に、日本の野外教育の立っている場所を同定するものである。さらに、アメリカ及びアジア各国の情報発信をすると共に、同ルーブリックをもとに、今後日本の野外教育が進むべき道を予測する。